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長友啓典
Keisuke Nagatomo
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1939年大阪生まれ。1964年桑沢デザイン研究所卒業。日本デザインセンター入社。1969年黒田征太郎とK2設立。
エディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、エッセイ連載など、現在に至る。
日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問
、東京造形大学客員教授




Translation to English

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装丁問答イッキ読み
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「PIKADON」
衣食住をテーマにイノチのことを考えます。




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装丁問答.3
装丁問答3 変幻自在の“甲賀流”本作り

平野甲賀という装丁家がいる。三十数年におよぶ作家活動だ。装丁の質はもちろんのこと、その数たるやもの凄いものがある。そういう事を言えば「生意気なヤツ」としかられるかもしれないが、このところ十年ぐらいの間に甲賀流(僕はそう呼んでいる)の書体というか、文字づくりを手の内に入れられた。その書体は完成度が高く、あるときは凛とし、あるときは軽妙洒脱な表現となっている。変幻自在だ。

今回ご紹介する本は『小沢昭一・百景』という全6巻のものでサイのマークの晶文社から出版されている。平野さんと晶文社は何故か相性が合うというのか、平野さんの手になる本が多い。作家の人もそうだろうが、装丁家も相性の合わない出版社がある。ボタンの掛け違いが最初にあると修正するのに苦労する。平野さんの文字はコンピュータで作られているにもかかわらず、アナログ的な暖かさがある。
装丁問答.3_c0009877_179188.jpg
平野さんほどコンピュータを使いこなしている人は業界でも少ないと思う。昔の装丁家は全て手作りで原寸の本作りをしていた。図柄にしても写真でブックカバーをデザインするにしても仕上がりと寸分違わぬ精密さで描き上げた。何案かプレゼンをして下さいなんて言われた日にゃ、たまったもんでない。
色ひとつとってもインク会社の色見本帖などがない時代は自分の気に入る色をポスターカラーで色作りをした。気に入った色を出すまでに新人のころはわずか2センチ四方を塗る色でもてこずり、ああでもない、こうでもない、この色とこの色をまぜると確かこの色になるはずだと作っている間にバケツ一杯にまでなってしまった。
ところがベテランは数分で色出しが終了する。赤い色を作るにしてもああでもない、こうでもないと刻々と変わる赤の変化を見ながら色の事を覚えていった。今ではコンピュータが何万色の色を記憶していてボタンひとつで好みの色が出てきてしまう。だから今の人は色の事を理解出来ないのではないかと老婆心ながら思ったりしてしまう。色に感情移入が出来ないのではとも思う。

何故色の話をしたかと言えば、この『小沢昭一・百景』のタイトル文字のなかにワンポイントの色が使われている。スミ文字のなかのこの色使いは見事としか言い様がない。
気負うわけでもなく、大声出して主張しているわけでもなく、一見どこにどんな工夫があるのかと思わせるところがこの本の装丁(文字、色使い、紙の選定)を成立させている。
付け加えれば、帯の使い方までが平野さんらしい細やかな神経が行き届いている。装丁の見本と思うぐらいだ。

「先日、朝日新聞のコラムで国会図書館では本の保存をする際、カバーをすべてはずして捨ててしまうというのを読み、時代錯誤、文化度の程度の低さにあきれてしまいました。ああいうのは何とかならないものでしょうか?」という葉書を友人から貰った。
装丁、カバーデザインに命をかけている身としたら、忸怩たる思いがする。装丁家、ブックデザイナーは作家、編集者、版元(出版社)の意向をいかに読者に伝えるかを日夜研鑚しているんですぞ。くれぐれも捨てるなんて事をお止め下さいませ。
by k2-d | 2006-05-12 17:10 | 装丁問答
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