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長友啓典
Keisuke Nagatomo
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1939年大阪生まれ。1964年桑沢デザイン研究所卒業。日本デザインセンター入社。1969年黒田征太郎とK2設立。
エディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、エッセイ連載など、現在に至る。
日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問
、東京造形大学客員教授




Translation to English

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装丁問答イッキ読み
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「PIKADON」
衣食住をテーマにイノチのことを考えます。




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装丁問答.11
装丁問答.11_c0009877_2334546.jpg
装丁問答11 一目会って虜になった絵

「BISES(ビズ)」というガーデニングの雑誌のアートディレクションを引受けて十年を越した。最初のころ庭、草花の事は全くちんぷんかんぷんで編集会議をやっていても出てくる単語は初めて耳にするもので意味も全く分らなかった。プランター、コンテナ、パーゴラ、ポタジェ、もっこうバラ、チャイナローズ……。

そもそも庭いじりとか庭仕事とか盆栽とかになるとお年寄りの手なぐさみと思われていたものが、ガーデニングというネーミングをビズが付けた事によって一般的に広まり大ヒットした。その年の流行語大賞になった程である。「モネの庭」は有名だが文豪「ヘルマン・ヘッセの庭」は知らなかった。「オードリー・ヘップバーンの名庭案内」「リンゴ・スターの庭」は有名人の庭。「チャペックの庭」は山本容子さんも大ファンだった事を知った。


最近では有名なおばあちゃま「ターシャ・テューダーの庭」がTVにまでなった。ビズ誌がこの様に色々な特集を組んだりしているうちに門前の小僧なんとやらで、少々庭の事が見えてきて、今ではガーデニング大賞の審査を引受けるところ迄来てしまった。

伊集院静さんがプロポーズがわりに奥さんになられる方に「ばら」という漢字はこう書くのですよ、と言ったとか言わなかったとかの噂がある「薔薇」もなんだかおかげで書けるようになった。本屋さんに立ち寄っても知らず知らずのうちに庭とかガーデニングという文字に敏感になっている。という訳で『庭仕事の喜び』(ダイアン・アッカーマン著/古草秀子訳/河出書房新社刊/装丁=緒方修一/装画・イラストレーション=大野八生)を紹介したい。 
装丁問答.11_c0009877_23353963.jpg

実に丁寧な本づくりがなされている。装丁力とでも言えば良いのか、大野さんのイラストレーションが一二〇%の魅力いっぱいでこの本に定着されている。大野八生さんの絵は以前より知っていた。一目会ったその日から(人ではなく絵ですぞ)虜になってしまった。どなたの紹介か、とび込みで来られたのか記憶は定かではないが、五、六年前の事である。僕の事務所にいわゆる売込みに来られた。世間の事(イラスト、デザインの業界)はあまりご存知ではなさそうで、プレゼンテーションの仕方がうぶだった。それがかえって気になった事を憶えている。スケッチブックを見ながら聞いてみると花屋さんだったか、造園のお仕事だったかにお勤めで、その行き帰りに道すがら目にする草花をスケッチし、その季節の感想文が横に添えられてあった。ほんとうに草花が好きで、ほんとうに絵を描く事が好きな事はスケッチブックから匂ひ立っていた。かがみこんでジーッと草花を観察している大野さんの姿が目に浮かぶ。少々時間をおいて先程のビズを紹介したり、雑誌の表紙の仕事をぼつぼつ始めた。パアーッと人目をひく派手さはないが、心ある(目利き)編集者、作家、装丁家の目にとまり、このところあちらこちらのジャンルで大野さんの仕事を目にするようになった。今回もいつものように本屋さんを散歩しているとまず、この本が目に留まった。一目見て大野さんだと思いうれしくなって文句なしに購入した。

草花の間を気持ち良い風が通り抜け、裸足の少女がスカートをなびかせ、踊る様に闊歩する絵。僕の記憶から消えていた土の上を裸足で歩く、あの気持ち良い感触を思い出し少年の頃へとタイムスリップさせてくれた。

「庭は魂に安らぎを与えてくれる場所」が見事に絵になってカバーを飾っていた。言わずもがなの事だけどタイトルの文字はほんとうに楽しげな文字だ。扉のイラストレーションの使い方、ドアーの向こう側の気配が抜群、章扉と章のレイアウトと細やかに扱われているイラストレーションのチャーミングさは詩人であるアッカーマンの言葉を訳された古草さんの文章と相まってこの本を見事に作り上げた。
装丁家の腕力に脱帽だ。
by k2-d | 2006-07-11 20:04 | 装丁問答
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